はじめに
今から始まるお話は、実は体験談です。ですが、時が経つにつれて細かい部分など順繰りに忘れていきそうなのでこうして書き留めておくことにしました。
詳細を思い出しながら、他のみんなにも手伝ってもらって、できるだけ克明に記してゆこうと思います。
今はまだ、確かな刻印として自分の中に残っているのです。
蒸発してしまわないように。いつまでも大切にしてゆきたい。そんな願いをこめて──
人生どのくらい<ゆめ>が見えるかは、個人によって変わってくることでしょう。
見えない人でも感じることはあると思いますし、中には何も気付かないまま通り過ぎてしまう人もいるでしょう。ただ、懐かしい匂いがした時や寝る前の安らいだ一時などはいかがでしょうか。
胸が締め付けられるような独りでに涙が出そうな切ない、なにかを思い出しそうな不思議な感覚にとらわれたことはありませんか。誰にだって一度はあると思いますよ。
そんな見えないものを見てしまったらどうしますか。
私達にとって見えないものであるはずの<ゆめ>は、決して秘め事ではありませんでした。ひょっとしたら読んでくださっている方々の中には、同じ時間を共有した人もいるかもしれません。
桜の吉野で、不思議な琴と笛の演奏を聴いた人はいませんか。
晩夏の真夜中に原っぱで、女の子が泣いているのを見たことがありませんか。
クリスマスの夜サンタクロースを見かけた人はいませんか。
聖バレンタインイブの空から、輝くこんぺいとうが降ってくるのを見たことがありませんか。
仲良く笑い合っているカップルを清水坂で見かけたことはありませんか。
カップルで幸せそうにじゃれ合っているのを奈良公園で見かけませんでしたか。
若いのにかっぽう着姿の美少女とスーパーですれ違いませんでしたか。
あなたのクラスに橙色の髪をした優しい男の子はいませんでしたか。
なんとなく耳のとがった寒がり屋の女の子はいませんでしたか。
金髪の長い髪を揺らして夢をたたえた男性が仕事場にいませんでしたか。
まだまだたくさん。それはみんな、私達の見えないものであるはずのゆめです。
とにもかくにも、まずは肩の力を抜いてプライドなんかはこの際すべて取り外し、学校のことも仕事のことも育児のことも一時忘れて下さい。
生きていく上で必要なプライドだって後でまた付けなおせばいいですし、身の周りも後でちゃんと思い出せば問題ありせん。今はお気に入りのコーヒーでも紅茶でも入れて、ただ忘れて下さいね。
私も世間体を気にして変な脚色を加えたりすることなく等身大で描いていくことにします。
ちょっと長いのが気がかりですが、どうぞ最後までお付き合いいただければ幸いです。一緒に<ゆめ>を見ましょう☆
|